6 翌朝、前日の復習をしよう
和田秀樹氏の本によると、記憶は「海馬」というところでつかさどっているようである。記憶でもすぐ消える記憶(短期記憶)。やや覚えている記憶(中期記憶)。ずーっと覚えている記憶(長期記憶)に分かれる。以下短期記憶などの説明については和田秀樹氏の本がうまいので次のとおり引用する。

◎まず、「短期記憶」を「長期記憶」に変える!

(前略)
 まず、記憶に関する基礎知識として押さえておきたいことは、記憶には「短期記憶」と「長期記憶」の二種類があることである。
 人間は、目や耳などの感覚器官を通じて、膨大な外部情報を脳にとり込んでいる。ぼんやり街の風景をながめていても、空の色、建物の形、街行く人々、その様子、ざわめきなど、感覚器官は膨大な情報を吸収している。
 しかし、特別の注意を払っていないかぎり、その情報のほとんどは、瞬間的に消えていく。視覚情報が網膜の残像としてそのまま保持されるのは一秒以下、聴覚情報でも数秒間にすぎない。
 そのなかから、関心の対象となる情報、興味をひいた情報が「短期記憶」されることになる。たとえば、街の風景のなかに美人を発見すれば、その姿をしばらくは記憶することになる。だが、その保持時間も、せいぜい一分間程度でしかない。
 むろん、「短期記憶」の能力は、あなたの暮らしや仕事におおいに役立っている。もし「短期記憶」のカがなければ、あなたは電話もかけられなければ、電車の切符を買うこともできなくなる。
 たとえば、電話をかけるとき、手元のメモを見てダイヤルをプッシュする。その数秒のあいだ、あなたはその番号を記憶しているわけだ。電話をかけ終われば、忘れてしまうにしても、「短期記憶」の能力がなければ、正確に数字をプッシュすることはできない。
 電車の切符を買うにしても、表示板を見上げて料金を190円と確認する。そして、財布を開き、自動券売機に必要なコインを放り込む。そのあいだ、あなたは190円という数字を記憶しているわけだ。
 そういう意味では、「短期記憶」の能力は、人間が人間であるためには、必須の能力といってもいい。
 ただし、1分間程度しか記憶していないような″知識″は、思考や勉強の役にはまったく立たない。たとえば、資格試験を受験する場合、勉強を始めてから試験に合格するまで、短くても数ヵ月、長い場合は数年の単位で記憶したことを保持しておく必要がある。
 また、業務上の問題について考える場合でも、長期に記憶している知識が思考のベースになる。問題解決用の思考に役立つのも、長期に記憶している知識、要するに「よく知っていること」が中心素材になる。
 ここで、一つ確認しておくと、医学的、心理学的な専門用語としては、「長期記憶」という言葉は、「短期記憶よりも長い記憶すべて」を意味する。つまり、1分間以上覚えている記憶は、「長期記憶」ということになる。
 しかし、1分はおろか、10分や1時間記憶していたところで、思考や勉強の役には立たない。思考の材料になり、また勉強をすすめる、うえで役に立つのは、最低でも数ヵ月は頭にとどまっている記憶である。
 そこで、この本では、「短期記憶」よりは長いが、すぐに忘れてしまうような記憶のことを「中期記憶」、最低でも数ヵ月以上は頭に残る記憶のことを「長期記憶」と呼ぶことにしたい。
 私のいう思考用の記憶術とは、「短期記憶」や「中期記憶」を「長期記憶」に変えていくテクニックといってもいい。「短期記憶」はむろんのこと、「中期記憶」も思考には役立たないのだ。とにかく、人間は忘れる動物である。覚えたつもりのことでも、時間がたてば、その歩留りは確実に悪くなっていく。
 たとえば、どの新聞でもよいが、あなたは今朝の新聞の一面トップ記事の見出しを覚えているだろうか。「たしか、読んだはずだが」という人でも、はっきり思い出せる人はそう多くはないだろう。私自身、今、この原稿を書いてみて思い出そうとしたのだが、はっきり思い出すことができない。
 人間の記憶力なんて、しょせんそんなものである。「読んだつもり」「覚えたつもり」程度の記憶は、しょせん「中期記憶」であって、それだけでは「長期記憶」には育たない。それでは、資格試験には合格しないし、問題解決のための思考もうまくはすすまないのである。

 「30代から始める頭のいい勉強術」和田秀樹著:三笠書房から引用 
                     

で、「短期記憶→中期記憶」にするにはまず理解を、また「中期記憶→長期記憶」とするには繰り返し復習するしか方法がないようである。

√2=1.41421356 、 √3=1.7320508 、√5=2.23620679 という意味のない数字でも、それぞれ語呂で合わせで「ひとよひとよにひとみ頃」 「人並みにおごれや」 「富士山麓にオーム鳴く」などとおぼえれば短期記憶が中期記憶になっていく。(一昔前に流行った歌で救われた人もいると思うけど)

しかしながらすべてがこういう風にはいかない。Y=Xのグラフや、Y=X2のグラフがどうなるかは実際に書いてみて覚えていくしかないが、これは「暗記」でなく「理解」である。この本来「理解すべき」ところを誤って「暗記」で済ませると、中期記憶は長期記憶にはまずならない。
「短期記憶→中期記憶」にするために、前日に行った問題(のうち、特にまちがえたところ)は、再度翌朝、理解し復習しよう。
「中期記憶→長期記憶」にするために、過去の試験問題は二週間をメドに必ず再度解くこと。
二週間を過ぎると一気に記憶から遠ざかり始めるそうだ。