甲種機械受験・体験記(Dさんの場合)
自己紹介
私は、師(=当HP管理者)と同じ某県の職員です。
平成9年度から3年間、高圧ガス保安業務に携わっておりました。
当時から師は公私ともにとても厳しいお方でしたねぇ。(気前はよかったですが。)
体験記
(受験願書編)
以前に「乙種機械」を取得し、かねてから「いつかは甲種を・・・」と胸に抱き続けておりましたが、毎年受験願書配布の時期になると決まって「明日(来年)があるさ・・」と臆病風に吹かれます。
問題集は平成12年に購入しましたが、チラッと見るだけで「無理!」と即決でした。とはいうものの、自分に甘いこの性格をなんとかしなくてはと思い、重い腰を上げました。そこで願書を入手しましたが、さっそく難関が・・・

―難関その1―

〈写真撮影が面倒〉

近所の写真屋さんは夜8時までしか営業していません。そのころは結構夜遅くまで仕事をしていたので到底間に合いません。一度8時ギリギリに店の前に到着しましたが、既にシャッターが…(「この店やる気ねえな!」って怒って帰りましたが。)次の日はなんとか間に合い、無事撮影完了。料金を支払うと同時にフロッピーをいただきました。(ん??)「JPEG形式で保存されていますので差し上げます。」そういえば前も貰ったなあ。家に帰り、机の中を漁ると、何と!ありました(涙)。

―難関その2―

〈受験料が非常に高い〉
甲種機械の受験料は14,500円です。願書を見ると・・・ん?締め切りが9月10日、給料日が9月16日、うーん、考えてもお金は出てきません。仕方なく何かを諦めて、一万四千五百円也を財布から取り出し、封筒に入れておきました。
ちょっと高いんですよね、14,500円って。乙種機械の時は10,000円でした。この差額4,500円は大臣試験の価値でしょうか?(ちなみに師が甲種化学を受験したときは、確かKHKの検定を受けているので検定23,500円+国家試験14,500円=38,000円のはず。さらに師は全科目免除のため、国家試験の会場にすら行っていないはず。これも14,500円。同情します。)
これらの難関をクリアし、願書を提出しました。KHK中部支部に来たついでに、最新版の問題集(3,500円税込み)を購入しました。いよいよ勉強です。
(勉強編)
なんとなく、勢いで願書を提出してしまったようにも思えますが、大金を投資した以上合格あるのみ、後戻りはできません。とりあえず、受験する旨を師に報告すると、
師:「おう、がんばれよ。ところで自信あるの?勉強したんだろうね?」
私:「いや、これから3ヶ月がんばります!」
師:「はあーん?これから3ヶ月?無理無理!まあ合格は来年だね。」
私:「・・・」
まあ、本心なのか、師なりの励ましなのかさっぱりわかりませんでしたが、無言で「師のマル秘ノート」を渡されました。こう言われた以上は一発合格必勝です。
いそいで家に帰ると・・・難関が待っていました(涙)。

―難関その3―
〈家事と勉強の両立〉
我が家は共働きです。妻の負担は多くなりがちですが、一応私も家事を分担しております。
家に帰ると、まず食事をします。食事の後片付けが私の仕事です。食事の後片付けが終わると、子供たちが待っています。そう、お風呂です。30分程度の入浴を終えると、大体9時近くになります。
「あれ、もう9時じゃん!」「おーい、寝る時間だぞう。」子供たちは、親がいないといつまででも寝ない雰囲気なので、私が一緒に寝ます。「おやすみなさい〜」「はい、おやすみ〜」と子供が寝る旨の意思表示をしてから約30分。
机に向かおうと、スッと立ち上がった瞬間、「お父さん、どこ行くの?」って。
またやり直しです(涙)

さて、子供が寝るともう10時過ぎです。
受験勉強の方針は、まず「学識」をマスターすることです。「保安管理技術」、「法令」はマークシートということもあり、なんとかなるだろうと思っていました。
とりあえず「学識」です。問題集を開くと・・・

―難関その4―

〈勉強の方法が分らない
甲種機械(学識)の問題は例年5問です。どの問題を見ても、すんなり理解できるものがありません。
とりあえず、一番目の問題を、問題、解答の順にノートに書き写します。解説を見てもさっぱりわかりません。
次にテキストで「断熱圧縮」関係の部分を見ます。
第1ページ目の半ば過ぎには、まぶたが半閉状態です。この時点で私の頭から「シュー」と煙が出ていてパンク状態でした。(1日目終了)

―ポイント―
〈師のマル秘ノート〉
さっそく勉強1日目からつまずきましたが、師から渡された「マル秘ノート」の存在を思い出しました。ぱらぱらめくってみると、平成2年度から最近の問題まで、問題、解答、解説の順で丁寧にファイリングされています。解説の後は、師の直筆で計算過程などが順序よく記載されています。実際、テキストでは省略されているような公式の導きなどがわかりやすく解説されています。
「ふむふむ、はーん、なるほど!」と私は唸るばかりでした。
私は、その「特注参考書」によって飛躍的に勉強がはかどりました。(感謝です。)

最高の参考書を入手し、問題の解き方を得た私は、あとはひたすら書きまくり、頭に叩き込みます。そうすることで、公式なども脳の深部で記憶されるような気がします。途中の計算間違えも少なくなりました。最初に使っていたノートは3日間程度で満杯です。
コスト削減のため、新聞広告の裏面を使用することにしました。(貧乏くさいですが。)裏が白い広告を選定していると、何とパチンコ屋関係の広告が圧倒的多数を占めます。
それがほぼ毎日続きます。パチンコ屋は景気いいのだろうか?(ひとりごと)

―教訓その1―
〈時間が無さ過ぎる〉
このような調子でやっていると、11月の試験に全く間に合いません。
基礎知識がある方はともかく、そうでない方はもっと早く着手することをお勧めします。
(注 基礎知識があるにしろないにしろ3ヶ月という期間は頭の中に記憶が定着するかしないかの瀬戸際です。試験に確実に受かりたい人は6ヶ月以上前からの受験準備することをオススメします。受験対策 2 助走期間を長く取るべし! を参照。:管理人)
そんなわけで、毎夜3時間程度(日曜日は休み)続けていると、次第に理解できるようになりました。幸い、前述のとおり平成12年度版の問題集(平成7年度から平成11年度分を収録)、平成16年度版問題集(平成11年度から平成15年度分を収録)と師のマル秘ノートを合わせると、何と、平成2年度から平成15年度までの過去14年間の問題を解くことができます。これらのおかげで出題傾向を分析することができました。

食事も惜しんで毎日勉強していると、勉強嫌いの子供たちもお父さんに習って広告の裏に何か書くようになり勉強のまね事をするようになりました。(子は親を見て育つことを少し実感しました。)
また、妻も私の勉強に協力してくれるようになり、お風呂に入れてくれたりするようになりました。(感謝です。)

ともかく、勉強を開始してから約3ヶ月間でやれることは全部やったつもりで試験に臨みました。

3ヶ月で勉強に費やした労力の割合
学識:保安管理技術:法令=6:3:1

【私が使用した参考書】
高圧ガス保安法規集 KHK発行
高圧ガス製造保安責任者 甲種化学・機械試験問題集 平成12年度版 KHK発行
高圧ガス製造保安責任者 甲種化学・機械試験問題集 平成16年度版 KHK発行
高圧ガス保安技術(甲種化学・機械講習テキスト) 改定版 KHK発行
高校時代に使っていた数学T教科書
師のマル秘ノート
日本工業規格 Z2271 金属材料のクリープ及びクリープ破断試験方法
日本工業規格 Z2241 金属材料引張試験方法
日本工業規格 Z2242 金属材料衝撃試験方法

「高校時代に使っていた数学T教科書」は積分を勉強するためです。(完全に忘れていましたので。)
「日本工業規格」は学識3問目でたまに出題される「材料試験」を勉強するためです。相当詳しく記載されています。(当たり前か!)
(試験編)
試験は日曜日でしたが、土曜日に準備をしました。
「HBの鉛筆と、消しゴム、一応シャープペンシル。ボールペンもあった方がいいかな。」
「念のため、鉛筆は7本、消しゴム2個、シャープペンシル3本、ボールペン2本。」
結局、ペンケースに入らず、新たにペンケースを1個購入しました。(三百円也)
筆記用具、関数電卓、受験票、問題集、テキストを用意し、夜10時に就寝しました。

当日は早起きし、準備したものの再確認をして「いざ、出陣!」です。
あらかじめ下見はしませんでしたが、大丈夫と思い地図を片手に試験会場を探します。「この角を曲がって、うーん、あそこだ!」到着しました。付近を見渡してもコンビニがありません。この様子だと昼食が心配なのでコンビニを探しに行きました。駅からの途中には無かったので、試験会場を通り越して最も近くのコンビニを探します。ところがありません。
結局、10分程度歩いたところに「ローソン松原店」を見つけました。約20分のロスタイムです。下見は大切ですね。
(師のHPにも下見は重要である旨の記載がありました。)(注 下見をしていない典型例です。コンビニがなく昼食がとれなかったらどうしていたんでしょうか。その場合、午後は完全にアウトです。「乙種機械」合格までの管理人の指導記 → 6 平成15年8月11日 「伝馬町決戦!ガイド」 → 4 試験数日前〜当日 → (2)試験会場の下見をしよう を参照:管理人)

さて、改めて受験会場に戻ると門前に集団です。そう、たばこを吸う連中です。専門学校だったためか、敷地内全面禁煙でした。数個のバケツを囲むようにして輪ができます。私もたばこを吸うので、違和感なく輪にとけこんで一服しました。

9時30分から「法令」の試験です。
勉強した時間は少なかったのですが、過去の蓄積で「難なくクリア」と思ったら、そうは問屋が卸しません。以外と難しく、満点は無理でした。

途中、30分の休憩を挟み11時からは「保安管理技術」の試験です。
問題が配られ、「始め!」の合図で一斉に問題が開かれます。私の場合、まず1〜15問をちらっと見てから取り掛かります。
「あっ、最後の「お助け問題」がない!!」
例年、15問目にはお助け問題かどうかはわかりませんが、必ず「作業環境における毒性ガス、可燃性ガス等の濃度に関する問題」が出ていました。これは、あるガスのガス濃度が示された条件下で、人間が作業することが可能かどうかを問う問題です。ただ暗記するだけの問題なので非常に簡単です。
ところが今年に限り、ありません。
最初からショックを受けつつ、90分間フルに使って完了。

お昼休みには、甲種化学受験のCさんと雑談しながら、法令・保安管理技術の答えあわせです。(注 休み時間に答えあわせを同僚らとしてはいけません。間違っている場合心理的に余裕がなくなります。「乙種機械」合格までの管理人の指導記 → 6 平成15年8月11日 「伝馬町決戦!ガイド」 → 4 試験数日前〜当日 → (8)当日・1時間目終了 を参照:管理人)
法令は化学、機械完全同一問題。保安管理技術は、一部で同一の問題があります。
「これは、こうだよねぇ?」「あー、そうだと思いますよ。」といわれて一安心。
「これは、こうだよねぇ?」「えー、私と違うなぁ?」といわれて最大の不安を覚えます。
とはいうものの、15問中、9問以上は多分OKでしょう。

昼休みが終わると、いよいよ「学識」です。
「法令」「保安管理技術」とややイレギュラー気味の問題が続いただけに「学識」はどうでしょうか。不安がよぎります。
問題を開くと、1問目はいつもの「断熱圧縮」の問題です。
しかし、圧縮するガスがここ数年続いている「空気」ではなく「水素」となっていました。「アレ?」っと思いましたが、分子量が違うだけであとは同じ。一応予定どおり解けました。
2問目は、例年どおりなら、「お助け問題」で「薄肉円筒形(球形)貯槽の応力と圧力のつりあい」の問題です。
あれ?よく見ると、全く見慣れない問題でした。なんだコレ?
コレは反則ですよ、KHKさん!
苦労しながら与えられた式を公式に代入して、アレコレ計算するうちに意味不明な巨大な分数になってしまい。ギブアップ。

そんなことで、3問目から5問目は時間との戦いでした。
5問目を書き終えると同時に、「あと5分です。」と無情な声が・・・
自分の解答を問題に書き写すのが精一杯で、見直しする時間がありませんでした。

帰りは金山まで、同胞のCさんと一緒でした。Cさんも自信なさげでした。
翌日、KHKのHPで「法令」、「保安管理技術」の合格基準クリアを確認しました。合格発表は翌年の2月2日です。
(合格発表編)
今日の2月2日は待ちに待った合格発表日です。
朝、目が覚めると外は一面の銀世界ではないですか。実に暗示的です。
子供たちに、「おーい、今日は雪で道路はすべ・・ウッ!」そう、今日に限っては禁句です。

午前9時50分、KHKのホームページを見ると、「大臣試験の合格者発表」がUPされて
いました。(ちなみに、10時発表予定と書いてありましたが、9時50分には掲載されていましたね。)クリックを2回ほどすると、「愛知県の合格者番号」までたどりつきます。
な、なんと、私の番号がありました。合格です!
さっそく、師に報告しました。すると「おめでとう、ご馳走してね!」だって。相変わらず師らしいご発言。わが師、わが家族、応援してくださったみなさんにお礼を言いたい。
「ありがとうございました」  完
(番外編)
―「百聞は一見にしかず」―
〈シャルピー衝撃試験機〉

学識の3問目は、例年「非破壊試験」、「溶接割れ」などの問題です。「材料試験」についても何度か出題されています。
そこで、最近よく出ている「シャルピー衝撃試験」について問題を解いていました。
問題集には、「振子式ハンマーにより鋼材を衝撃させ、振子の持上げ角と衝撃後の振り上り角に対応するエネルギーの差が・・・」と記載されています。
私の頭の中で、シャルピー衝撃試験機が勝手に形成されていきます。
「振子式ハンマーか。振子といえば催眠術で使うようなものだな。だから、小さな金槌のようなものをワイヤーかなにかで吊り上げて、試験片に衝撃を加えるんだな。」
翌日、違う年度の「シャルピー問題」の解説・評価を見ていると、
(評)今回は数年ぶりに出題したこともあって、極めて不正解が多かった。特に「シャルピー衝撃試験機」を見たこともない受験者が「ハンマーを糸で吊るし、試験片に衝撃させるような試験機」と勘違いしている解答があった。
全く、私も同じものを想像していました。

そこで、私が以前勤務していました某県産業技術研究所を尋ねました。転勤してから10年近くたちますが、顔見知りの研究員もいました。
研究員さんに「シャルピー衝撃試験機」を案内してもらいました。
全然違いますね。ハイ。大きさ、構造、何もかも想像していたものと違います。
試験片の衝撃実験もやってもらいました。ついでに、引張試験機、圧縮試験機なども案内・実験してもらいました。
私も、調子に乗って、次は「クリープ試験の実験をお願いできませんか。」と尋ねると。
研究員:「はあ?クリープ試験?あんたクリープ試験知ってるの?」
そうです、高温の雰囲気中で静的荷重を材料に加える試験です。
研究員:「3000時間とかやるんだよ。無理だわ。」
:「す、すみません。何にも知らないので・・・」

まあ、恥もかきましたが試験機の実物を見ることができ、合格に向け前進することができました。
「百聞は一見にしかず。」ですね。