5000mのペース設定について
 
 ロードレースにおいて10kmを走る場合もマラソンを走る場合も、基本となる目安はトラックの5000mのタイムです。
 5000mのタイムを上げることによって、10km、ハーフマラソン、フルマラソンの持ちタイムを上げることが十分可能であるということです。逆に言えば、5000mが速くならなければ、10km〜フルマラソンはなかなか速くなりません。
 これは経験からいっても、実業団の練習方法からみても正しいと思われます。

 かつて、瀬古や中山の全盛時代、彼らは10000mを27分40秒程度で走りながらマラソンも2時間8分で走っているのです。今これを日本人でできるのは、高岡(カネボウ)だけです。アテネオリンピックのマラソン日本代表にはなれなかったのですが、彼は4種類の日本記録保持者なのです(下の表のとおり。平成16年5月12日現在)。これだけマラソンが高速化されてきた時代ですから、当然ベースになる速さも要求されるわけです。
距離 タイム 日本記録保持者 所属 年月日 大会名 場所
3,000m 7.41.87 高岡 寿成 鐘紡 99/05/28 セビリアグランプリ セビリア
5,000m 13.13.40 高岡 寿成 鐘紡 98/08/01 ナイト・オブ・アスレチクス ヘクテル
10,000m 27.35.09 高岡 寿成 カネボウ 01/05/04 カーディナル招待 スタンフォード
マラソン 2.06.16. 高岡 寿成 カネボウ 02/10/13 シカゴマラソン シカゴ

 さて、高岡と自分を比べるとがっくり来るのですが、自分が15分台でバンバン走っていた頃の記録をもって5000mペースメイクについて説明します。

 5000mで15分台で走ったのが過去4回。うち3回は、1周ごとの記録が残っていたので掲載しておきます。
 
その1
年月日 平成4年10月31日(土)
大会名 第20回名古屋支部陸上競技選手権大会(瑞穂)
天候 晴れ
周回 距離(m) 時間(ST〜) ラップ 1000mごとの通過タイム
1/2 200 35s   距離 時間(ST〜) ラップ
1 1/2 600 1m47s 72s 1000 3m02s 3m02s
2 1/2 1000 3m02s 75s 2000 6m12s 3m10s
3 1/2 1400 4m17s 75s 3000 9m23s 3m11s
4 1/2 1800 5m34s 77s 4000 12m38s 3m15s
5 1/2 2200 6m51s 77s 5000 15m54s92 3m17s
6 1/2 2600 8m06s 75s  
7 1/2 3000 9m23s 77s
8 1/2 3400 10m40s 77s
9 1/2 3800 11m59s 79s
10 1/2 4200 13m18s 79s
11 1/2 4600 14m37s 79s
12 1/2 5000 15m54s92 78s
 「その1」は、初めて15分台に突入したときのものです。
 最初の1000mは、完全にオーバーペースである3m02sで入っています。試合全体の流れもあるのですが、この時の集団は全体的に速かったと思います。以後1000mずつのラップは、3m10s〜3m17秒で少しずつですが遅くなっていますが、最初の1000mの貯金で16分を切っています。
 もう一つのポイントとしては、400mのラップで80秒に到達していないことです。
 5000mで15分台で走るのであれば400mのラップとしては80秒を越えてはいけません。
 
その2
年月日 平成5年10月30日(土)
大会名 第21回名古屋支部陸上競技選手権大会(瑞穂)
天候 小雨(スタート:午後1時55分)
周回 距離(m) 時間(ST〜) ラップ 1000mごとの通過タイム
1/2 200 36s   距離 時間(ST〜) ラップ
1 1/2 600 1m49s 73s 1000 3m03s 3m03s
2 1/2 1000 3m03s 74s 2000 6m09s 3m06s
3 1/2 1400 4m17s 74s 3000 9m19s 3m10s
4 1/2 1800 5m32s 75s 4000 12m31s 3m12s
5 1/2 2200 6m46s 74s 5000 15m47s2 3m16s
6 1/2 2600 8m02s 76s  
7 1/2 3000 9s19s 77s
8 1/2 3400 10m37s 78s
9 1/2 3800 11m52s 75s
10 1/2 4200 13m11s 79s
11 1/2 4600 14m31s 80s
12 1/2 5000 15m47s2 76s
 「その2」は自己ベストの時のものです。
 最初の1000mは「その1」と同様にややオーバーペース気味に3m03sで入っていますが、この時は前半の3000mを9分19秒で通過したため、前半にかなりの貯金ができました。4000mまでは何とか持ちましたが、この後ペースダウン。しかし何とか15分50秒を切れそうだったのでラスト1周は死にものぐるいで戻ってきました。
 
その3
年月日 平成7年4月15日(土)
大会名 第1回名古屋支部陸上競技大会(瑞穂北)
天候 くもり・20℃(スタート:午後5時25分)
周回 距離(m) 時間(ST〜) ラップ 1000mごとの通過タイム
1/2 200 36s   距離 時間(ST〜) ラップ
1 1/2 600 1m52s 76s 1000 3m08s 3m08s
2 1/2 1000 3m08s 76s 2000 6m14s 3m06s
3 1/2 1400 4m21s 73s 3000 9m29s 3m15s
4 1/2 1800 5m35s 74s 4000 12m46s 3m17s
5 1/2 2200 6m53s 78s 5000 15m57s4 3m11s
6 1/2 2600 8m10s 77s  
7 1/2 3000 9m29s 79s
8 1/2 3400 10m49s 80s
9 1/2 3800 12m07s 78s
10 1/2 4200 13m26s 79s
11 1/2 4600 14m43s 77s
12 1/2 5000 15m57s4 74s
 「その3」は春先のもので、その前月の19日に「日比野賞中日マラソン」に出場し2時間43分59秒で帰ってきたあとの大会の記録です。
 当時の記録を読むと、2月末の犬山ハーフ(1時間12分57秒)を走ってから、アキレス腱の調子が悪く、マラソン(日比野賞中日マラソン)の出場をするか否かは当日決断しました。最初からゆっくり入ってほぼイーブンで戻ってきています。
 その後4月9日は、焼津みなとマラソン(5km:15分58秒)を走ってその翌週がこの記録ですので、当時は割と短期間でマラソン→トラックへ体の切り替えが出来ていたようです。
 この時の組は全体にペースが遅く1000mの通過も3m08sと一番遅いものです。その後全体がペースアップしたため1000〜2000mが逆に3m06sとなっています。割とイーブンで走ったもので1000mごとのバラツキも11sでおさまっています。
 
 以上をまとめると自分でポイントとしていた(気をつけていた)のは、
(1)名城公園4周(約5.2km)でTTを行う。概ね、その時のタイムからマイナス1分がトラックでの5000mの予想タイムとなる。(トライアンドエラーの結果)
(2)概ね名城公園4周で17分前後で走っていた頃には、5000mで16分くらいのタイムが出るはずなので、そのタイムからペースメイクを考える。
(3)その結果、最初の入りはやや速め(1000m − 3m05sくらいがちょうど良さそう)
(4)各周回のペースは80秒を越えない(これは誰かに声をかけてもらうのが一番)
(5)3000mの通過は9分30秒以内
(6)ラスト1周の通過タイムは14分40秒以内

 1000mごとのラップタイムに「20秒」も開きがあるようではペース設定がいいとは言えません。
 入りの1000mがやや速めになることを考慮しても1000mごとのラップ差は10秒程度に収めましょう。